伐倒の手順

【資格・技術・講習】

ここでは、現場での実際とは無関係に、講習等で習う教科書的手順と注意点などを備忘録的に書いておきます。
本記事では講習で習う笛の合図を一例として示しております。
尚、笛を使った合図等は全国一律では定められていないため、チームで合図の意味を共有しておきましょう。
後々加筆修正を行う可能性があります。

1. 作業前の準備と確認

まずは周囲の安全確保と、自分自身の装備を整えます。

  • 環境確認と計画: 風向き、木の重心、周囲の障害物(電線や他の樹木)、上方のツタや枝絡み、足元の状況を確認。伐倒予定木の樹高の2倍相当の範囲に他の作業者がいないか確認。
    木に抱きつくくらい接近して上を見上げると重心方向が見やすい。
    熟練者でない限り、倒せるのは重心方向から左右45°の範囲くらい。無理に90°とか狙うとチェンソーが挟まって動けなくなる(経験済みw)
    ※伐木講習ではここで「上、ヨシ!周り、ヨシ!伐倒方向ヨシ!」と声出し・指差し確認があります。
  • 退避路の確保: 木が倒れ始めた際に即座に移動できるよう、伐倒方向から斜め後方45度などの方向に障害物を取り除いた退避路を(できれば2本)確保します。
    ※伐木講習ではここで「退避場所ヨシ!」の声出し・指差し確認があります。
  • 作業域の整理: 肩より下の枝を落とし、作業範囲から人や障害物を取り除きます。
  • 保護具の着用: ヘルメット、フェイスシールド、防振手袋、防護ズボン(チャップス)、安全靴、イヤーマフ、防護ブーツの着用は必須です。

2. 伐倒作業の手順と合図のタイミング

① 作業開始の合図(準備の合図)

  • 【合図】作業開始の合図として笛を鳴らします。タイミングは受け口の作成前、いよいよチェーンソーを木に当てる直前。
  • 目的: 伐倒作業を始めることを周囲に知らせ、安全圏への退避を促す最初の警告です。周囲からの「了解」や「退避完了」の返事(挙手とか笛とか無線)を待ってから次へ進みます。

② 受け口(方向付け)の作成

  • 倒したい方向の幹に、直径の約1/4〜1/3を目安にV字型の切り込み(受け口)を作ります。
  • 「会合線(2つの切り込みがピタッと合うこと)」がズレないようにしましょう。始めは上手くできないので、何度か成形することになりますが、この時に切りすぎないように。
  • 受け口は45°以上になるように。
    最近のチェーンソーにはガンマーク(補助線)が付いているのでそれを目安にするとやりやすいでしょう。

③ 追い口(切り倒し)の作成と「つる」の維持

  • 受け口の反対側から、受け口より少し高い位置に水平に切り込み(追い口)を入れます。
  • 重要ポイント(つる): 受け口と追い口の間に「蝶番(ちょうつがい)」のような役割を果たす「つる(ヒンジ)」を必ず残します。これを切り落としてしまうと、木が意図しない方向に倒れたり、作業者側に跳ね返ったりするリスクが激増します(これによる死亡事例もあります)。
  • 必要に応じてクサビを挿入します。
  • つるの厚さは直径の約1/10が目安。
  • (講習ではクサビを打つ直前に笛を鳴らしますが、追い口を作っていると、傾斜や重心によっては自然に倒れ始める場合があるため、私の先輩は追い口作成直前にも合図を出しています。)

④ 伐倒(倒伏)開始の合図(緊急の合図)

  • 【合図】追い口が完了し、木が動き始める直前、またはクサビを打ち込む直前に行います。
    多くの現場では「ピッピッピッ」という連続音が用いられます。
    長音1回「ピー」のチーム・講習もあるようです。
  • 目的: 「今まさに木が倒れる」ことを周囲に強く認識させ、視線を伐倒木に向けさせるためです。

⑤ 退避

  • 合図の後、木が倒れ始めたら、あらかじめ決めておいた退避路へ速やかに離れます。

⑥ 作業終了・安全確認の合図

  • 【合図】 倒木が完全に停止し、周囲の粉塵や跳ね返りの危険が去った後に行います。
  • 目的: 木が倒れた衝撃による「枝折れ」「跳ね返り」「隣接木の挙動」などが収まり、もう近づいても大丈夫だという安全(作業完了)のサインを周囲に伝えます。
  • ※伐木講習ではここで「上(落下物)ヨシ!材の安定ヨシ!」の声出し・指差し確認があります。

以上、合図は「作業開始前」「伐倒直前」「作業終了後」の3つです

3. 作業上の注意点

  • かかり木の処理: 木が他の木に引っかかって倒れなくなった場合、安易に近づいたり切ったりせず、専用の器具や技術を用いて安全に処理してください。
  • キックバックへの警戒: ガイドバーの先端上部に木が当たるとチェーンソーが跳ね上がる「キックバック」に注意し、正しい姿勢を保ってください。
  • 無理をしない: 内部が腐っている木や傾斜地の作業などは危険が伴うため、無理をせずウインチ等の活用を検討してください。
  • 合図の多角化: 林内ではエンジンの音などで笛の音が聞こえない場合があります。大声での呼称、無線、身振り手振りを併用して確実な意思疎通を図ってください。

最後に

以上、あくまで講習で習う教科書的な内容になります。
講習やテキストでは上に真っ直ぐに伸びた杉などを用いて説明されており、伐倒実習も実際の現場よりも傾斜が緩やかです。
急傾斜地で素早い退避が難しかったり、谷に向かって伸びる広葉樹が多かったり、実際の現場では全てが教科書通りには行かないことが多いですが、基本は大事です。

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